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腰にある剣に手を添えて、探索を続ける。徐々に、周りにいた冒険者たちが少なくなってきた。
迷路のように複雑に入り組んでいる迷宮である。皆、思い思いの道を選んで探索しているのだろう。
一人になると急に心細くなる。しかし、思いを奮い立たせて歩き続ける。
遠くで剣同士がぶつかる金属音やモンスターの怒号が聞こえてくる。やっと自分も夢であった冒険者の一員になれたという実感が沸いてきた。
突然、バーンの背後に気配を感じる。振り返ると、暗がりの中に怪しく光る目があった。
剣を抜いて、身構える。いよいよ生まれて初めての戦闘だ!
すると、光る目の隣にも、同じような光が現れた。まだ姿は分からないが、モンスターは一匹ではないようだ。これは、油断できない。
その間にも、光る目は増え続けている。あっという間に、十を超える数になった。
初めての戦闘で、相手のモンスターが数十匹。……殺される。
その時、バーンは冒険が常に死と隣り合わせであると、肌で実感した。考えが甘かった。
剣一本だけで、後は普段の生活と変わりのない服装。どうして、鎧を購入しなかったのか。先立つものがなかったのだが、それで命を落としてしまっては元も子もない。
バーンが回れ右をして、一目散に駆け出したときには、光る目は三十以上に増えていた。
――走れ、走れ!
こんなに力の限り走ったことはないというほど、走りに走った。後ろからは、多くの足音が追いかけてくる。追いつかれれば、待っているのは死だ。
迷宮の中を闇雲に、右に左に。どこをどう走ったのか、全く覚えていない。
ついに力尽きて、倒れこんだときには、追っ手の足音は消え去っていた。なんとか、逃げ切ったらしい。
気がつくと、バーンは少し開けた部屋の中にいた。ここは、いったいなんだろう。
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