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だが、記憶には違和感があった。友人が笑いかけているのは煌太ではなくもうひとりの存在なのだ。煌太が廊下から部屋に顔を出し声を掛けるともうひとりが振り返る。ただ、その振り返った顔はおぼろげで見えない。
そうか、と煌太。この記憶は弟と遊びに来た友人なのだ。今朝の両親の話では、今まで弟の持ち物だったものはすべて彼のものになっていた。それなら、今までの弟の行動も彼の行動となっているのかもしれない。存在のない弟の輪郭が、少しだけ見えた気がした。
『そういえばそうだった!忘れてた。』
『まじかよ!(笑)本当に身体大丈夫か?』
『大丈夫(笑)ゲームなんだけど、なんか壊れててさ!どこのお店でもらったか覚えてない?』
苦しい言い訳だな、と煌太は苦笑した。それでも弟の情報を少しでも掴みたかった。五島はいつもと違うであろう相手を少し不審に思ったのか、少しの間があいた。しかし、何かを察したのか、体調が悪いせいかもしれないなと言って心配したメッセージをはさみつつ、そのお店やゲーム、それから一昨日の行動について知ってることを教えてくれた。
最後に送られてきた
『とりあえず今日はもう無理せず寝ろ!明日一緒に探してやっから!』
というメッセージに、保護者かよ、とツッコミを入れつつ弟を大事に思ってくれる友人に感謝を込めて、また明日、と返信し煌太はメッセージアプリを閉じた。
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