01 七神銀という男

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「天国って、快適なんだろうか」  七神銀(ななかみ ぎん)の助手兼お世話係である六寺金太郎(むでら きんたろう)が鉛筆の尻を咥えたままつぶやく。どうやらヒマを持て余して絵を描いていたようだ。咥えた鉛筆を上下に揺らしながら視線だけを上に向けて考えている。  銀が描きかけの絵を手に取る。  とても下手な絵。  いや、もはや絵とも呼べないレベルでの落書きを見てため息を吐く。  ここは『カクリク・カク』という名のマッサージ店。  時と時のわずかな狭間に存在するお店。  いわゆる時の透き間と呼ばれる白いもやがかかった不可思議な空間に建っているお店だ。もちろんカクリク・カクは時の透き間などという不思議な空間に建っているのだから主人である七神銀も六寺金太郎もいわゆる人間という存在ではない。  七神銀は犬耳を持つ人狼と人間のハーフであるし、金太郎に至っては存在不可思議。  ともかく。  金太郎について語りたい事は山ほどあるが、まずは銀だ。  銀はいわゆる頭脳モンスター。  IQは計る事が馬鹿らしく思えるほどに高く、人間の領域を遙かに超えている。  この世界(……地球と言うよりも宇宙そのもの)が始まった頃より生き続けていると言われる半妖。悠久の時を生きているがゆえに知恵と知識に関しては神すらも凌駕するとさえ思えるほどである。エメラルドグリーンの瞳は全ての謎の先を見通す力がある。  その知恵と知識を使い推理するのが銀の趣味。
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