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take2
今の時刻は午後3時。
写真を撮りながらさらりとその辺りを回って帰っても、1時間程度だろう。
いつも外を出歩く時よりも、少し荷物が多い分、歩くスピードも普段より更に遅いのではないかと思う。
まあ、焦る旅でもない。
お爺さんには時間があるものだし、ゆっくりしよう。
これから使えるフィルムは、23枚。
さっきの1枚も一体どんな遠藤が写っているのだろうか。
フィルムカメラの特徴でもある、写真を撮れる枚数に限りがある、という面に関しては、今のデジタルカメラに慣れている人からすると厄介だろう。
撮り直しが効かないのだから。
その分、1枚1枚を丁寧に撮りたくなるもので、私はそこも好きなんだ。
撮るときの緊張感、現像してもらう時の期待感。
今こうして歩いている間も、私を高揚させてくれる。
さて、まずはどこへ行こうか。
何を撮ろうか。
人か、動物か、静物か、風景か。
いや、人になると勝手に撮っては怒られてしまうだろうか。
動物もフィルムを巻いている間にどこかへ行ってしまうのではないか。
そうなると、静物の草花や何気ない空き地といった風景になるのか。
そんなことを思いながら歩いていると、目の前に見えてきたのは、私の母校だった。
「小学校か」
カメラを握る手に少し力が入った。
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