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夏、来たる。
学校。それは私にとって集団の1人で居られる場。
私は学校の生徒のうちの1人であり、明美の数多くいる友人の中の1人である。
夏が来る。
今日は期末テストも終わり、皆騒いで教室がいつも以上に騒々しい。
「来週から夏休みかあ。」
明美はそう呟いた。
「そうだね。夏休みっていっても暇だなあ。」
明美はふと、私の顔を見た。彼女は何か私に何か伝えたそうで口が少し開いていた。
「どうしたの?」
「べつに。」
明美は何か言いたそうだったが、これ以上何も話して来なかった。
明美と別れた後、またいつもの書店へと向かった。
今日は特にこれといって買いたいものはなかったが、なんとなく書店の空気に包み込まれたかった。
書店には私とおじさん以外誰もいなかった。
落ち着く。とっても。
私は書店の空気を吸い込み、今日一日の疲れがとれた。
書店で15分ほど本をペラペラとめくり、おじさんにこの前買った式部日記の感想を話したりした。
和泉式部は好きじゃない。彼女のようなそこまで身分が高くない女が色々な男と恋に落ちるなんて身分相応ではないと思う。だが、式部日記は一人の男性との切ない恋を美しく描かれている。事実がどうであれ、書物には美しく記すことができる。
自分自身、なぜかそのことにとても救われるのだ。
自分がどうであれ、周りには自分を隠すことはできる。
そう、私は考える。
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