裏返し。表返し。

奏殊

「おお、奏殊。おかえり。」
おじさんが突然扉を開けた。
「ただいま、おじさん。」

頭の中が混乱して、情報収取ができない。彼はおじさんの子供なのだろうか。

「ああ、ちいちゃん。前々から言おうと思っていたが、この子は私の弟の息子さんだ。三年前に弟と弟の嫁さんが事故で亡くなってね。私が引き取ることにしたんだ。ちいちゃんと同じ学校だったってこと、すっかり忘れてたよ。」

そうだったのか。私はさっき彼に発した言葉を思い出して、恥ずかしさと情けなさを感じた。

だが、それと同時に私が彼についた嘘がばれ、そして本当の私を知られてしまったらどうしようと、焦りも感じた。

私は様々な感情が一気に私の心ににでき、どうしたらいいかわからなかった。

だから、私は走ってしまった。

ああ、また逃げてしまった。

この時は少し、自分を惨めに感じた。

初めてだった。