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朝、学校に行くのが憂鬱だった。
目がすごく腫れぼったい。
昨日のあの後輩に学校で会ったら、とうしよう。
彼に私の嘘はばれているのか。ばれていたら、私をどう思うのだろう。
私は学校へと向かうが、他の生徒を見かける度に胸が痛くなる。
彼らは、私をどう思っているのだろうか。
もしかしたら、昨日私があの本屋にいるところを見た人がいるのではないか。
私は他人が怖かった。
「ちとせ先輩~!」
ちとせ?私を下の名前で呼ぶのは両親と本屋のおじさんくらいのはずだ。
誰かが、私の肩に手を乗せた。
振り向くとあの少年がいたのだ。
「先輩~、昨日急に帰っちゃうのでびっくりしましたよ。」
「ごめんね、急用思い出しちゃって。」
嘘。
「そうなんですか。あ、おじさんから聞きましたよ。おじさんとちとせ先輩、昔から仲良いらしいですね。ちとせ先輩の御両親さんと昔、仲良かったとか。だから、昨日うちの本屋にいたんですね。」
嘘。おじさん、私をかばってくれたのか。おじさんは、なんとなく私が他の人に自分の趣味を隠していることを知っていたと思う。ずっと前から。
「うん、仲良いよ。」
「あ、もし良かったら今日の放課後に僕のお勧めスポットにいきませんか?」
え?これって、二人でってこと?
「宇月~!早くしないと朝礼始まるよ!」
明美が私を呼んでいる。
「じゃあ、放課後先輩の教室の前に行きますね!」
そう彼は言って、去っていった。
セミの音だけが私の耳に響く。
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