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あんな奴の面倒を見させられて、大変だったね。友達はそう言って私に同情した。
彼は結局教室には帰らず、そのまま病院に行った。事件が、決定的な事件が起こったのは、その翌日のことだ。
『オゴエの姉チャンは売春フwww』
登校すると、教室の黒板にでかでかとそう書いてあった。とっさに教室を見渡し、彼の姿がまだないことに私は胸をなでおろした。そして、黒板の文字なんて見えてないというフリをして、自分の席についた。
――本当かな、アレ
――知らねえの? 売れっ子ソープ嬢だってよ?
――私はキャバクラだって聞いたけど?
――同じだろ、そんなの
――ねえ、キャバクラって何?
ひそひそと、興味本位の無責任な言葉が飛び交っていた。私もその外にはいられなかった。話しかけられて、あたりさわりのない言葉を返す、自動運転のようにそんなことを続けながら私は、行動しろ、という胸の中から聞こえてくる声に激しく悩まされていた。
彼が登校してくるまえに、黒板の文字を消してしまわなければならない。
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