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オゴエと私と紙ピアノ
騒がしかった昼休みの教室が、一瞬静寂に包まれた。
オゴエが激しい勢いで倒れて、後頭部を床にたたきつけたのだ。心臓が止まるかと思うほどひどい音がした。オゴエはなんでもないというふうにゆっくり起き上がった。オゴエが倒れる原因をつくったキタノたちは馬鹿笑いしながら、今日も十分楽しんだという顔でその場を離れていった。そして教室もいつものことだというようにもとの喧騒の中にもどっていったのだが、私の胸はまだ激しく鼓動していた。
オゴエは床にあぐらをかいて座って、手の中の細長い紙切れを、破れていないかを確認するかのように見つめていた。
コピー用紙を何枚かつなげて、そこにピアノの鍵盤を模した図が書いてある紙切れだ。キタノたちにとられそうになって、子供じみた引っ張り合いになって、オゴエがムキになって我を忘れた瞬間にキタノたちが突然手を放したのだ。それでオゴエは後ろにひっくりかえって、後頭部を床にうちつけた。
「立って」
私はオゴエに近づき、冷たい声でそう言った。
「保健室に連れてくから立って」
「別に、なんともないし」
「早く立ちなさいよ。手間かけさせないで」
しぶしぶと言った調子でオゴエは立ち上がった。
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