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別れよう
「別れよう、て言ったらどうする?」
俺は彼女に言った。
彼女はストッキングを履く手を止め、俺に視線を向けた。
俺はベッドの縁に腰掛けている。
俺には彼女が必要だけれど、彼女には俺が必要ないのかもしれない。
そう思ったんだ。
そう思い始めて何ヶ月経ったんだろう。
すごく悩んでいた。
ひとりで悩んでも仕方がないから、俺は彼女を試すようなことをした。
本当に、馬鹿だ。
「何…言ってるの」
彼女の冷たい目。
ひっそりと灯る照明が二人の影をつくる。
俺は彼女の返事を待つ。
時間が経つのがすごく遅く感じる。
これは、気まずい。
「必要とされていなかったら、私はこんなところにいない。私にはあなたが必要で、あなたは私を求めてる。別れるだなんて、冗談はよしてよ」
彼女は俺の目を正面から見て、そう言った。
ああ、彼女にはすべてお見通しなんだな。
そう思った。
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