生きる

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生きる

 ある日、俺はテレビを観ていた。  その番組の中で、司会者が出演者と視聴者に向かって、こう問いかけた。  「生きていると感じるときはいつですか」  多くの出演者が、こう答えていた。  「食事をしているときです」  俺はそうは思わなかった。  俺は、空腹時が一番、自分が生きていると感じるときだと思った。  空腹時は、生きている、というよりも、生きようとしているときだと思う。  身体が生きようとして、生きるための栄養を欲しているときなのだ。  しかし、俺には空腹を感じることができない。  水分はちゃんと摂っているが、食事はほとんどしない。  菓子を少しつまむくらい。  そんな生活が数ヶ月続いている。  しかし、体重はあまり減らない。  俺は生きているのか、生きようとしているのか、死のうとしているのか。  わからなかった。
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