不思議の国のアリス症候群

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不思議の国のアリス症候群

 小柄で痩せっぽっちの俺。  電車で、目の前に縦も横もでっかい女がどかっと座った。  怖い。  そのとき、俺は思った。  正直怖い。  向こうは全く俺のことなど眼中になかったとは思うが、大きな肉食獣が目の前に現れたような感覚に陥った。  ただただた、恐れですくんでしまって、逃げることもできず食べられるのを待つ小動物。  それが今の俺。  怖いながらに、こんなに大きな女は見たことがなくて、まじまじと観察してしまった。  そして、女が何駅か先で電車を降りると、魔法が解けたように小動物の俺は消え去った。  情けない話だ。  それがきっかけだったのか、電車や街中で、人やものが異様に大きく見えることが増えた。  あの女のときより前から、俺は自分がすごく小さくなり、周りがすごく大きくなる感覚に陥ることがあった。  しかし、あの女の登場により、それを感じることが多くなっていった。  圧迫感などはないのだが、ただただ、周囲が大きいのだ。  変な感覚。  気持ち悪い。  俺は、その感覚に陥ると、解消されるまで嫌々待つしかなかった。  この感覚を感じるのは俺だけなのだろうか。  
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