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第三話 最初の忘却
僕はヒトを殺してしまった。頭部を撃たれたからか、頭の中が痛い。死体が消えていく、消える。
「あれ…僕は何してたんだろう?」
思い返してみる。たしか何かと戦ったような…左手が、左手が謎の力を使えるんだ。
試しに近くの手頃な石を左手で拾い上げる、そして強めに握る。すると石は泥団子を潰すように崩れていった。
大体の事は思い出した。特別な力を持つ光る左手と、何かと戦ったこと、人を…殺したことも。でも死体がない、隠した心当たりもない。相手の顔も思い出せない。
時刻が気になりふとスマホを見てみる、大量のラインと着信履歴。時間は、12時を過ぎていた。門限の10時を過ぎている。
「とにかく急いで帰らないと。」
走る。速い。自転車よりも速いかもしれない。2キロ程離れていたが数分で家に到着、そっと玄関のドアを開けた。家の中は明かりがついていない、好都合だ、ゆっくり…。
「どこ行ってたの!?」
「ひゃっ!」
急に明かりが付いたと同時に母の声、かなり驚いた。
「よく見なくとも泥だらけじゃない!先にお風呂入って!」
風呂から出ると母がぼやいていた。
「何したらこんなに服がボロボロになるのかね、全く」
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