第二話 赤い手

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男は右手を抑えながら叫び声をあげ、僕に背を向けて逃げ出した。 「待てッ!!」 怒りが収まらない僕は地面を蹴り、逃げる男の所まで接近し、左手の拳を握る、心なしか光も増している。 そのまま僕は男の背中を全力で殴りつけた。 かしゅっと軽い感触の後、拳は空気を切る感覚がした。 僕の拳はやすやすと男の身体を貫通し、その衝撃波でその穴は広がり、直径30センチほどの大穴を開けていた。 男はぐらりと前のめりに倒れた、その大きな傷口からは鮮血がどくどくと流れ出ている。 頭に昇った血がどんどん下がってゆく、極めつけに僕の黄色い手は今や男の血で真紅に染められている、そこでようやく僕は自分のした事の重大さに改めて気づいた。 ―――僕は―――ヒトを―――殺した―――
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