シンデレラの約束

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理の迎え時、気持ち悪いくらいの笑顔を顔に乗せて「お疲れさま」と塾終わりの理に言った。 少し不気味な顔をした理は「望月先生から」と“進伸館”の紙袋を差し出した。 「え、また……?」 もしかして、ラスクのお礼だろうか。ピンときた。 「望月先生と舞ちゃん文通でもしてるの?」 「え!」 「僕だけしか渡されないから」 理の指摘に顔が熱くなる。きっと赤いはず。 「ううん、あ、理、ポテサラ握ってきたよ」 コロリと丸めてラップに包んだポテサラを理に差し出す。 「ありがとう。嬉しい」 「ポテサラ好きだもんね?」 「うん、舞ちゃんのポテサラ美味しいから。カニカマが入ってるのがいいよね」 なんて、いい子……。 胸まで熱くなる。 「帰ろうか」 「うん」 視界の端に映る理はポテサラを溢さぬよう器用にラップを剥きつつ、かぶりつく。 その姿はいつも通りに見えた。 望月先生の封筒を開けたのは、帰宅後すぐ。 部屋でこっそり中を見ると、緩いS字型で先端にキュービックジルコニアのチャームついたブックマーカーが入っていた。 オシャレで、可愛らしい。 「いいの?」と彼はいないが、思わず口にしてしまう。 塾に行く前に買ったのだろうか。 読書をしていると知っているからだろうか。 「舞ちゃん」 部屋を覗いたのは理だ。 「うん?」 この間同様、背にブックマーカーを隠す。 「おじいちゃんがケーキ、買ってきてるよ」 「あ、うん。そうだよ、モンブランあったでしょ?」 「まだ見てない」 父も理のことを気にしているようで、私の話を聞き、理の好きなケーキを買いに行ったのだ。 しかも大量に。 「そうなの?モンブランは3種類くらい買ったみたいだよ」 「そうなんだ、やったぁ」 私は、まだ食べていない5枚のクッキーの横にブックマーカーを添えて、喜ぶ理の後に続いた。
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