シンデレラの約束

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金曜日の22時過ぎ。 「戊辰(ぼしん)戦争がおこったのは“何年”」 「1868年」 「うん。じゃあ政治の方針を示す、新政府が発表したのは“何”?」 「五箇条の御誓文」 「うん。じゃあ……この時江戸を“何”と改めたの?」 「“東京”と改め、翌年には首都としたんだよね?」 「えっと……そう、ばっちり」 翌日のテストに向け、理と復習。 相変わらず理の記憶力は抜群。 理の様子を密かに観察しつつ、私は問題を出していた。 ちなみに、望月先生へのお返しは何もできていない。 ブックマーカーのお返しになるようなものを思い付かず、今週が過ぎそう。 そのうえまだ、お礼も言えていない。 火曜日、お返しを何か買いに行くべきだと思っているところだ。 「舞ちゃん、次」 「あ、うん。じゃあ政府が欧米諸国に負けない国づくりを進めるために、産業を育てて国を豊かにし、軍事力を強化するためにおこしたさまざな政策を何という?」 「“富国強兵”。ちなみに富国強兵を進めるため、政府は西洋の新しい制度や技術を導入しようと多くの外国人を招き入れたんだよね?」 「えっと、うん、そう」 隣で母は「すごいわね」と理を眺めている。 「じゃあ次は……1872年に富国強兵を進めるために優れた人材を育てるため教育制度を整える必要があることを考えました。そこで政府は“何”を定めたの?」 「学制」 「うん、正解」 「でもね、6歳以上の男女に教育を受けさせることを定めたけど、当時は子供も働き手で授業料も高いから、はじめのうちは学校に通う子供は多くなかったんだよね?」 「あ、うん、そうみたいだね……」 “授業料が高い”と理の口から出て、ビクリと私の身体が震えた。 けれど理は「東京大学や慶應義塾、同志社や東京専門学校はこの頃作られて、大学や私立学校で学んだ人たちは、政治家や役人、研究者や実業家になって日本を近代化を進めていくんだよ」と、次の話題にいくので密かにホッと胸を撫で下ろす。 「へぇ、この頃、大学ってできたんだ……」 そして“なるほど”と首を縦に振った。
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