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「でもマスクよりマフラーの方がよくない?直目立つし……」
長身で彫りも深い直は目立つ。
「そうか?」
「うん、絶対」
「貸そうか?」
自分のマフラーを掴み見せると「いや、後ろにある」と親指で後部座席を指した。
「取ろうか?着ける?」
「いいよ、あとで着けるから」
「わかった」
新規のパン屋は外観がパリっぽくオシャレだった。
オーナーはオーストラリアに留学していた人だと聞いている。
外から見る感じではお客さんが多そう。
外のイートインコーナーには、女性客が多い感じだ。
私も入りたくなるような店。
しかし直の手前褒められない。彼をチラチラ覗くと「舞の考えてることは、手に取るようにわかるぞ」と笑われた。
「え!」
「気を遣わなくていいぞ。ほら、行ってみようぜ」
彼に肩を軽く叩かれ車から降り、店に入る。
ちなみに直はマスクからマフラーに変えて。
「結構広いな」
「うん」
中は売り場とイートインコーナーがきっちりわけられており、コーヒーマシーンがあるためだろう、コーヒーの香ばしいいい香りがした。
レジの後ろのガラス窓から、厨房があるのがわかる。
“いらっしゃいませ”と売り場にいる店員は今見えるだけで5人。皆、可愛らしい。
負けてる……と、変なところで落ち込むも、“アルマ”には郁ちゃんもいるから、と密かに自分に“大丈夫”と言い聞かせる。
あまり観察してばかりだと怪しまれるためトレイとトングを手にし、パンを物色。
全体的にハードパンが多い。そしてサンドイッチの種類もわりかし豊富。
「気になるのとっていいか?」
「もちろん」
直はゆっくりとパンを選び、トレイをぎっしりにした。
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