シンデレラの約束

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店は外観だけでなく内装までオシャレで、店員も不馴れ感はあるが雰囲気が柔らかく丁寧だった。 直の焦りは私まで伝わっていた。 けれど私は“アルマ”の方が好きだ。 ベーコンチーズエピを一口かじる。 どうか“アルマ”の方が美味しくあって……と祈りながら。 「うん、クルミ入りの“アルマ”の方が美味しい……」 それは本当に思ったこと。 「結構マスタードが強いな」 「うん。マスタードがチーズを邪魔してる」 たいした舌を持っているわけでもないのに、料理評論家のように偉そうなことを言って、もう一口続けて口に入れる。 「やっぱり“アルマ”の勝ち」 すると直が“ふっ”と笑って私の頭をぐしゃぐしゃにした。 「舞を連れてきてよかったよ」 私もつられて“ふふっ”と笑った。 翌日の水曜日の11時頃、“アルマ”でパンの陳列をしていると、一人お客様が入ってきたので「いらっしいませ」と声を上げながら、扉を見た。 「こんにちは」 「……望月先生」 お客様は望月先生で、仕事に行く前だろう、スーツ姿だった。 「いらしてくださったんですね」 「えぇ」 望月先生は店内をぐるりと見回す。 「いい感じのお店ですね?」 「えぇ」 私は営業スマイルを乗せた。
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