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「今からお仕事ですよね?お昼ごはんですか?」
「えぇ。それもあるのですが、櫻木さんにお会いしたくて」
爽やかな笑顔を向けられた。
「え!」
“どういうこと!”と胸が驚きで跳ね、きっと厨房まで届くような大きな声を出した。
「こちらをお忘れでしたので……」
望月先生は水色のカードケースをスーツのポケットから出した。
それは紛れもなく私のもの。
「あ……」
「昨日、櫻木さんの座られていた椅子に落ちていまして」
「すみません……!」
テキストを取り出した時だろうか、それとも最後慌てて立ち上がった時?
「いえ、理君便でお渡ししようかとも思ったのですが、重要なものが入っていたら大変だと思いまして」
「はい!免許証が入ってました」
今夜、理を送るので免許証は必要。
免許証不携帯で運転するところだった。危ない。
「そうなんですね、よかったです」
「はい……」
とりあえず、受け取らなきゃ……
手には焼きたてのカレーパンの乗った天板がある。一度厨房に戻らなきゃと思った時、郁ちゃんが「舞さん、持ちます」と天板を取った。
水曜日は郁ちゃんが朝から入れる日。
水曜日は全休にし、他の4日で講義を多めに受けているらしいのだ。
「ありがとう」
郁ちゃんの表情は私と望月先生に興味津々という感じ。
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