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「マンションを借りる場合は理と二人で住むつもりなんだよね?」
「……そうですね」
「じゃあ尚更舞さんは考えなければならないよ。今みたいに舞さんのご両親に頼れなくなるよ?」
「……えぇ」
言い返せない。
唇を小さく噛み締めた。
「俺はどこでも仕事ができるから、理に付いていけるし、合わせやすいよ?」
「……」
「舞さんはそういうの、ある?」
「いえ……」
「理にとって、俺と舞さんが二人で育てていくことが一番いいと思うんだけど」
「……咲哉さん、それは……」
断ったはずだ。
けれど、強く言えない自分がいる。
「理にとって一番いい道を作ってあげたいよね?」
「……それはそうですね」
きっちり断ったつもりだったのに、咲哉さんに今、負けている。
「もう一年きったから、よく考えた方がいい」
「それは、そうですね」
「愛さんや兄さんのぶん、理に愛情を持って育てていけるのは俺と舞さんしかいないよ」
「……」
何も返せない。
咲哉さんをただ見つめていると、理が戻ってきた。
そのため、話はおしまいになったが、咲哉さんの言葉は私の心にずっしりと残った。
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