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秘密の恋愛は苦しい。
胸にモヤモヤを抱え、店を出る。
素敵な家族だなんて今、一番言われたくない言葉だった。
私が啓さんの恋人だと言いたくてしかたがなかった。
啓さんと咲哉さんが会話する中、彼女をちらちら気にしていたが、可愛らしい雰囲気の女性だった。
女性の存在は、咲哉さんの誘いを忘れさせるくらい、私の心を嫌に刺激していた。
「望月先生いい先生だね?」
「え?えぇ」
「理のこともよく見てくれている感じだし」
咲哉さんは理が褒められたことに上機嫌になっているのだろう。
「賢い甥を持って俺は鼻が高いな」
「私もですよ」
「理をこれから先も見守っていきたいな」
「……そうですよね」
私も咲哉さんも理を大切に思っていることは同じだ。
しかし、私の恋心は別にある。
皆が幸せになる方法があればいいのだけど……。
“お姉ちゃん、お姉ちゃんはどう思う?”
返ってこない返事に、私は小さく息を吐いた。
啓さんからの電話をこんなに待った夜はないかもしれない。
咲哉さんと別れ、理を寝かせた後、私は部屋にこもりスマホとにらめっこをしていた。
彼から電話をもらったのは午前0時に届きそうな時間。
ワンコールで出てしまった。
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