48人が本棚に入れています
本棚に追加
「舞、遅くなってごめんね」
「ううん全然」
私はそう言ってすぐ「啓さんと一緒にいた女性は誰ですか?」と聞いてしまった。
モヤモヤする心をずっと抱えていられない。
子供みたいにストレートに聞いた。
「あの人は英語講師の小林先生だよ」
その名前は前に彼とスーパーに行った時に出てきた講師の名だ。
「え、でも今夜は小学生の先生方との食事会ではなかったのですか?」
「彼女は小学生担当の英語講師なんだ」
「なるほど」
時代だ、と納得すると、啓さんが「彼女は既婚者だよ?」と笑った。
「え!」
「やきもきする舞は可愛いけど、変な誤解は与えたくないから先に言っておくね」
「……そうなんだ」
力が抜ける感じがした。
スマホが手から抜け落ちそうなくらい。
「舞から“誰?”っていう視線をすごく感じてたよ」
「だって、気になってたから」
「そうだよね。僕も同じ立場ならそうだな。でも安心して、お店にいたのは彼女だけじゃないから」
「……うん」
「もしそうなら舞に話しかけたりしないよ」
たしかに、と無言で頷いた。疚しいことがあるなら隠れるだろう。
「僕には可愛い彼女がいるからね」
「……啓さん」
「可愛い彼女に少しでも会えて嬉しかったよ」
心のモヤモヤが吹き飛ぶ。
不安な要素を綺麗に取り除いてくれる優しさが好き。
改めて啓さんへの恋心を感じた。
最初のコメントを投稿しよう!