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「な、直……」
「付き合ってるのか?」
直が顔を寄せてきた時、おばさんが「直樹、悪いけど鉄板おろして」と休憩室に入ってきた。
直は「おぅ」とおばさんに答え、席を立つ。
ホッとした私だったが、直が「あとで詳しく聞かせろよ」と言うので、私は理を塾に送っていた後、直の部屋を訪ねた。
「お店は大丈夫?」
「母さんと郁ちゃんに任せてきた」
「なるほど、夕方は少ないもんね」
「おぅ、でもあとで戻るけどな」
心で忙しくなればいいと言うが、誰も直を呼びに来る様子はない。
「直……顔、怖いよ」
直は無表情。そのうえ腕を前で組んでいるので不機嫌に映る。
「いや、だって信じらんねーよ。理の塾講師と付き合ってるんだろ?」
「……うぅ」
「なんでだよ」
「……なんでって好きになっちゃったから」
もうごまかせない。
私は正直に胸の内を伝えた。
直はしばらく黙ってしまった。
「私だって悩んだよ……いいのかなって。でも、好きになっちゃったから」
同じことを言って場を繋ぐ。
すると驚く答えが返ってきた。
「なんであいつなんだよ」
「え?」
「俺だって舞が好きなのに」
「……え?」
「つーか気付けよ」
「へ……」
「こんだけ構ってんのに気付かねーとかバカだろ」
「ば、バカ?」
好きだと言われバカだと言われ、私の頭はこんがらがってしまう。
「直、私が好きなの?」
「好きだよ」
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