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「今まで気が付かなくてごめんなさい」
「だから、いいって……もう」
「よくないよ」
私は少しだけ強く言った。
「よくない……」
「……」
「直は私にとって、とても大切な人だよ」
直の瞳が緩やかに細まる。でもその色は弱々しい。
「直にはお世話になりすぎなくらいお世話になってるし」
「やめろよ」
「だって、そうだもん」
姉が亡くなってから、お受験ママとして頑張っていこうと決めた私を一番に応援してくれたのは直だ。
直がいたから半年間理を見守ってあげられたと言っても言い過ぎではないくらい、彼にはお世話になっている。
「私、直が大好きだよ」
「……舞」
「だけどその好きは幼馴染みとしてのもの……」
「……おぅ」
「ごめんなさい。私は直を幼馴染み以上に見れない」
「……わかってる」
直が下唇を噛み締めて息を吐いた。
「ごめんなさい」
私は頭を小さく下げ、心でも“ごめんね”と言った。
「もうわかったよ。いいって」
私はフッた立場なのに泣きそう。瞳に涙がうっすら浮かぶ。
そのため直まで泣いているように映る。
「俺だって、もっとちゃんと……いや、もう本当いいから」
「……」
「これまで通り、俺たちはただの幼馴染み。いーな?」
「……直」
「いいか、もう持ち出すのは止め、な?」
直はそう言うと私の頭をぐしゃぐしゃに撫で、視界を塞ぐように髪を散らした。
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