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「あの話、考えてくれた?」
「はい……」
義兄に少し似た笑顔を向けられ、私は顔を固くした。
三月のはじめの休日は、咲哉さんが友人の結婚式のために福岡にやってきた。
そのため、日曜日に私と理は彼と科学館に来ていた。
館内のパソコンを真剣に見つめ調べものをしている理の少し後ろの椅子に、私と咲哉さんは隣同士に座って理を見つめていた。
「その感じじゃ、“ごめんなさい”かな?」
咲哉さんは察しがいい。
苦笑しつつ長めの足を組み直した。
「はい。ごめんなさい。私、やっぱり好きな人としか結婚できません」
啓さんとの関係はとても良好。
先週の火曜日は、時間いっぱい彼の家で甘い時間を過ごした。
毎日の電話と火曜日のデートで、私たちの仲はどんどん深まっている。
「もしかして、彼氏でもできた?」
「……え!」
当てられた驚きに大きな声を出すと、理が振り向き「え?」と首を傾けた。
すぐに大きく首を横に振り「なんでもないよ」と囁き声で返した。
理がパソコンと向き合うと、咲哉さんが“ぷっ”と吹き出す。
「舞さんわかりやすすぎ」
「……わわ、いませんよ」
「もしかしてパン屋の幼馴染み?」
「いや、違います。別の……」
人だと言いかけて口を手で押さえた。
「やっぱり彼氏できたんだ?」
「……はぅ」
もう、ごまかせないと眉を下げた。
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