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「理、そろそろ行かない?」
理は熱中しすぎるタイプだ。そのため、気がつくと入館して5時間近く経っていた。
今は17時過ぎ、咲哉さんは明日の飛行機で千葉へ帰る。
今夜は、夕食も一緒にする予定でいた。
「理、何食べたい?なんでも食べたいものごちそうするよ?」
咲哉さんは理の肩を優しく掴み、顔を近付けた。
眼鏡の奥の理の瞳が笑い細まる。
「なんでもいいの?」
「いいよ。寿司でもステーキでも」
理は「じゃあお寿司?」と控えめに、咲哉さんを見つめた。
咲哉さんは理の頭をよしよしと撫で「よし、じゃあ寿司な」と言って、「舞さんもいい?」と今度は私に顔を近付けた。
「はい。でもお寿司、いいんですか?お昼もおごっていただいたのに……」
「全然いいよ」
「ありがとうございます。嬉しい。ね?理」
「うん。咲哉君ありがとう」
咲哉さんは理の頭に彼の手をぽんと弾ませた。
「舞さん、美味しい寿司屋知ってる?」
「ご予算はいくらくらいですか?」
店員口調になり聞くと「問わないよ」と同じ口調で帰ってきた。
「わ、太っ腹」
「独り身のアラフォー男ですから」
答えに悩むと咲哉さんは「理と舞さんが喜んでくれるのが一番嬉しいよ」と笑った。
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