48人が本棚に入れています
本棚に追加
スマホで調べて入った寿司屋は、いかにも寿司屋という感じで、普段回転寿司にしか行かない私ははじめ固かったが、座敷の両隣に子連れ家族が座ったことから、緊張が逸れた。
「二人とも、何でも頼みなよ?」
「マグロ頼んでいい?」
「いいよ。中トロでも大トロでもなんでも頼みな。舞さんは?」
「私はイカいいですか?」
「いいよ。二つでも三つでも」
「いや、一つでいいですよ」
「そうなの?じゃあ他に色々注文するといいよ」
彼はそう言うが、私も理もなかなか選べないでいた。
「なかなか遠慮するね、理も舞さんも」
「えぇだって……」
金額が気になり悩む。
理もそうなのだろうか。“うーん”とメニュー表を眺めている。
「じゃあこうしよう。大トロ、中トロとイカ、それに松、竹、梅一つずつ頼んで、皆で好きなの取って足りない時は好きなネタを頼むことにしよう」
その提案は理も食べやすい頼み方。
「いいですね」と、それに乗った。
彼はその他もあら汁と茶碗蒸しをそれぞれ頼んでくれた。
密かに私は独身アラフォー男は違うと感心していた。
「これは“ウツボ”でこっちは“エイ”」
「え、すごっ……!」
「さすが、じゃあ理これは?」
「これは”ハタハタ“だったはず……」
「わお、すごっ、そうなの?」
私はスマホで答え合わせをし「正解」と言った。
お寿司が届くまでの間、魚偏のコップに並ぶ漢字で私たちは盛り上がっていた。
「理、すげー。やっぱ賢いんだな」
理が照れ臭そうに笑う。
「理のその頭脳は今後おおいにいかさないとな」
「ほんとほんと」
私は大きく頷いたが、咲哉さんが「理は青付中以外どこを受けるの?」と突然尋ねたので、固まった。
だってたぶん彼は千葉に来て欲しいのだから。
「まだ迷ってるよ」
私は咲哉さんの隣に座る斜め前の理を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!