秘密がバレる時

5/23
前へ
/23ページ
次へ
スマホで調べて入った寿司屋は、いかにも寿司屋という感じで、普段回転寿司にしか行かない私ははじめ固かったが、座敷の両隣に子連れ家族が座ったことから、緊張が逸れた。 「二人とも、何でも頼みなよ?」 「マグロ頼んでいい?」 「いいよ。中トロでも大トロでもなんでも頼みな。舞さんは?」 「私はイカいいですか?」 「いいよ。二つでも三つでも」 「いや、一つでいいですよ」 「そうなの?じゃあ他に色々注文するといいよ」 彼はそう言うが、私も理もなかなか選べないでいた。 「なかなか遠慮するね、理も舞さんも」 「えぇだって……」 金額が気になり悩む。 理もそうなのだろうか。“うーん”とメニュー表を眺めている。 「じゃあこうしよう。大トロ、中トロとイカ、それに松、竹、梅一つずつ頼んで、皆で好きなの取って足りない時は好きなネタを頼むことにしよう」 その提案は理も食べやすい頼み方。 「いいですね」と、それに乗った。 彼はその他もあら汁と茶碗蒸しをそれぞれ頼んでくれた。 密かに私は独身アラフォー男は違うと感心していた。 「これは“ウツボ”でこっちは“エイ”」 「え、すごっ……!」 「さすが、じゃあ理これは?」 「これは”ハタハタ“だったはず……」 「わお、すごっ、そうなの?」 私はスマホで答え合わせをし「正解」と言った。 お寿司が届くまでの間、魚偏のコップに並ぶ漢字で私たちは盛り上がっていた。 「理、すげー。やっぱ賢いんだな」 理が照れ臭そうに笑う。 「理のその頭脳は今後おおいにいかさないとな」 「ほんとほんと」 私は大きく頷いたが、咲哉さんが「理は青付中以外どこを受けるの?」と突然尋ねたので、固まった。 だってたぶん彼は千葉に来て欲しいのだから。 「まだ迷ってるよ」 私は咲哉さんの隣に座る斜め前の理を見つめた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加