秘密がバレる時-2

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啓さんが帰ったあと、私は直をちらちらと意識していたが、結局何も言えず次のお客様が来るまでの間、私も直も静かにしていた。 気まずすぎる。 郁ちゃんが休みでなければよかったのに、と何度も感じた。 もう啓さんに来ないでと言っていいだろうか。 そう考えてしまうくらい、私の心は慌てていた。 重なることも多かった休憩だが、今日は直が来ることはなかった。 もしかすると、これまでわざと私との時間を作っていたのかもしれない。 そう思うと、また胸が痛みを思い出し、自分の無神経さを悔やむ。 直を知らない間にたくさん傷つけていた自分が嫌。 この気持ちが消えることはあるのだろうか。 でも直に恋心が向くことはない。 苦しさは昨日と変わりがなかった。 今日は理の塾があるから16時にあがる日。 私は早く早くと時間が過ぎるのを密かに待っていた。 「お疲れさまでした!」と“アルマ”を出るとひどくホッとした。 これまでとても働きやすかった場所。 またそう早く思えるようになるといい。 学校帰りの理は私の調子の良さを見て、ホッとしたようだ。 塾までの車内では普段のような笑顔が見え、私は改めて自分の優先順位は理だと思い、“アルマ”で頑張らなければと思うのだ。
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