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啓さんが帰ったあと、私は直をちらちらと意識していたが、結局何も言えず次のお客様が来るまでの間、私も直も静かにしていた。
気まずすぎる。
郁ちゃんが休みでなければよかったのに、と何度も感じた。
もう啓さんに来ないでと言っていいだろうか。
そう考えてしまうくらい、私の心は慌てていた。
重なることも多かった休憩だが、今日は直が来ることはなかった。
もしかすると、これまでわざと私との時間を作っていたのかもしれない。
そう思うと、また胸が痛みを思い出し、自分の無神経さを悔やむ。
直を知らない間にたくさん傷つけていた自分が嫌。
この気持ちが消えることはあるのだろうか。
でも直に恋心が向くことはない。
苦しさは昨日と変わりがなかった。
今日は理の塾があるから16時にあがる日。
私は早く早くと時間が過ぎるのを密かに待っていた。
「お疲れさまでした!」と“アルマ”を出るとひどくホッとした。
これまでとても働きやすかった場所。
またそう早く思えるようになるといい。
学校帰りの理は私の調子の良さを見て、ホッとしたようだ。
塾までの車内では普段のような笑顔が見え、私は改めて自分の優先順位は理だと思い、“アルマ”で頑張らなければと思うのだ。
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