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「直はフラれても普通にしてくれるのに、私はできない……。
“アルマ”ほど働きやすい場所はないから、ちゃんと頑張らなきゃいけないのに、今、心が大変で」
私はベッドにうつ伏せになり、枕に顔を埋めた。
ヤバイ、また泣きそうだ。
「どうしたらいいんだろう……?鈍感な自分が嫌。ひどい事をしたんだなぁって苦しくて……。この思いはいつまで続くと思いますか?」
啓さんに聞いても、彼は困るだけだろう。
けれど私は答えを待った。
「難しいね」
「……うん」
「これまで仲のいい幼馴染みだったんだもんね」
「……そうなんです。
やっぱりしばらくはぎくしゃくしてしまうのかなぁ。私、モテたことがないから、わからない」
“ふぅ”と息を吐く。
すると啓さんは「姉はそんなこと言ってなかったけど」と言った。
「え、佳純さん?」
「舞は男性客からよく声をかけられてたって言っていたよ」
「えぇ、そんなことは……。佳純さん自分の話をしているんじゃないですか?」
少しも思い当たらず言うと、啓さんが小さく笑い「僕は舞が鈍感でよかったと思うよ」と言った。
「啓さんも私が鈍感って思うの?」
「……まぁ」
「……そっか」
「でも、本当によかったと思うよ。もし舞が鋭かったなら、きっと僕は舞と付き合えなかったかもしれないから」
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