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「どういうことですか?」
「考えたくないことだけど、僕よりいい男なんてたくさんいるから、舞の気持ちが別の誰かにとられていたと思うんだ」
啓さんよりそういい男がいるとは思えない。
それに、私が別の誰かを好きになれる気なんてしない。
「舞が鈍感で僕はラッキーだと思ってるよ」
「啓さん……」
ラッキーなのは私の方。
こんなに優しい人に好かれるなんて。
きっと、自分の鈍感さに嫌気がさしている私を慰めようと、優しい台詞で気遣ってくれているのだろう。
「きっと今は直君のことを考えて色々思うこともあるだろうけど、時間が経つごとに気持ちも落ち着くだろうし、彼との関係も元に戻ると思うよ。
大切な幼馴染みなんだから」
「……そうですね」
「うん」
「はい」
「あ……」
「え?」
「ごめん、勝手に舞の大切な幼馴染みを直君なんて呼んでしまって」
彼は小さく笑った。
まるで心の息が抜けるよう。
「啓さん」
「うん?」
「やっぱり、会いたい」
私は断ったはずのおねだりをした。
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