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「皆にバカじゃないぞアピールができたかな?」
理の顔は暗いけれど、私は明るい顔を崩さない。
「できていたらいいんだけど」
理はまだ無言でいるから、私は理の小さな身体をギュッと胸に閉じ込めた。
まだ彼はランドセルをしょっているため、私の両手の位置はちぐはぐ。
それでもギュッと寄せた。
「理、心配してくれてありがとう。もう、理、優しい。大好き!」
理はどれだけのものを抱えているのだろう。
私に簡単に移すことができるといいのに……。
強く閉じた瞳から涙が溢れ出た。
理の背に隠れていてよかった。
すぐさま、袖で拭く。
「私は本当に大丈夫だよ。元気だけが取り柄なんだからね。
私は理がおじいちゃんになっても元気でいる予定なんだから」
理が鼻を“クスッ”とすすった。
少しして、胸辺りに冷たさを感じた。
バカな私はどう声かけしていいかこれ以上はわからない。
だから、しばらくの間、理を抱き締め、「お腹減ったね?おやつなんだった?」と口にし、彼の返事を待った。
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