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「おはようございます」
普段通りを心がけ、“アルマ”の裏口から店へ入る。
「おはよう」
マスクをしている直の表情はすべてはわからないが、覗く瞳と声は通常通り。
“よかった”と心で言い「昨日はありがとう」と笑った。
「もういいのか?」
「うん。もう元気!」
「そりゃよかった」
「うん。郁ちゃんは大丈夫なの?風邪?」
「熱風邪だって。舞と一緒だな」
「流行ってるのかな……」
悩み熱だと思ったが、そうではないかもしれない。
受験生の理をベッドに誘ったけれど、大丈夫だっただろうか。
でもきっと昨日一緒に寝たことは間違えではないはず。
「そうかもな。治ったばかりなんだから無理すんなよ」
「うん、ありがとう」
直は心配してくれたが、私の調子は良好で、忙しく売り場と厨房を行き来していた。
10時前、“アルマ”の扉が開く音がし、パンを陳列させていた私はお客様だ、と「いらっしゃいませ」と言いながら顔を向けたけれど、固まった。
「こんにちは」
それは啓さんだった。
「こ、こんにちは」
啓さんは笑顔を向ける。
笑い返したいけれど、それができず咄嗟に厨房の直を確認した。
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