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「舞ちゃん楽しんできてね」
「うん。ありがとう」
理をギュッと抱き締めた後、温かな“バイバイ”に見送られ家を出たのは、啓さんとお泊まりデートの日。
まだ朝の8時と早い時間だった。
こんなに朝早くに啓さんと会うのは初めてのこと。
昨日は彼が休みだったから、気を遣わずいられる。
啓さんとの待ち合わせ場所は、家から一番近い公園で、私は彼の車を見つけ乗り込んだ。
「おはよう啓さん」
「おはよう」
啓さんの唇が私の唇に一瞬触れた。
それだけで胸がときめくのに、今日一日一緒だなんて、私の心はどうなるのだろう。
「天気がよくてよかったね」
「ほんとに」
天気は快晴。
私たちのデートを楽しいものへと演出するような空の青は見ていて心地よい。
「理君は大丈夫だった?」
「うん。“いってらっしゃい”って笑顔で送り出してくれた」
「そう。よかった。お母さんは大丈夫だった?」
母にバレ気味だと伝えてあるから、彼は心配気な顔を見せた。
「うん……」
母はというと“楽しんでくるのよ”とウインクをし、私を見送った。
温かく送り出してくれたことはありがたいが、相手が啓さんと知った時に、どんな顔をするかと想像すると怖い。
「それならよかった」
「うん」「じゃあ行こうか。車、出すよ?」
「お願いします」
ゆっくりと動き出す車と比例するように、私の胸のウキウキも強くなる。
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