思いがけない贈りもの

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今回は突然のことなので、デートコースはほぼ啓さんにおまかせで、これから隣市へ向かうところだ。 「窓、寒かったら閉めてね」 「うん、大丈夫。気持ちがいい」 ほんの少し開いた窓の隙間から滑り込む緑の風が心地よい。 “うーん”と窓に顔を近づけ、鼻をすんとさせる私に彼が小さく笑った。 「変な顔してました?」 咄嗟に両頬を押さえた。 「ううん」 “じゃあ何?”と首を傾げると、彼が頬を優しく撫でた。 優しい手に胸の奥がキュンと締まる。 「朝早くから舞に会えて幸せだなぁと思って」 甘い台詞にまた、胸が震えた。 「私こそ……」 その私の声は小さくて、窓の外へ流れていった気がしたが、彼が“ふっ”と笑ったのでちゃんと届いたのだとわかった。 私こそ幸せ。 いい一日になる気しかしない。
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