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まだ、ほんわかした気持ちだ。
まさか啓さんにプロポーズされてしまうなんて……。
「舞、鍵開いてたわよ」
「え、うそ!あ、そうかも……ごめんなさい……!」
母の怒り顔に、私は首を縮め両手を“バシン”と合わせた。
たしかに啓さんと別れて帰宅したあと、鍵をかけた記憶がない。
「まったく、理君もいるんだから気を付けてね」
「はい……すみません」
「もう……」
母は呆れたように言うと、キッチンへ行く。
その後ろ姿はまだ何か言いたげだけだ。
私は心で“気を付けます、すみません”ともう一度謝った。
だが、仕方がない。
だって、昨日のことは鍵をかけ忘れてしまうくらい衝撃的なものだったのだ。
昨晩の車内で、“僕も行けるよ”という啓さんの台詞に、私は呼吸を止めてしまうくらい驚いた。
「へ……?」と返した声はちゃんと届いたかわからない。
「もし、青付中に理君が通うことになって、舞も近くに家を借りて付いていく気なのなら、僕も一緒に行くことだってできる。通える距離だし」
「……啓さん?」
私の心は慌てていた。
「僕もどこにでも付いていけるよ。一緒に住むのは理君が抵抗あるだろうから、はじめは舞と理君が住む部屋の隣を借りて住み始めようか?」
「え、ちょっと……ちょっと待って」
頭の中が混乱する。
「お義兄さんの弟さんの提案がすべてじゃないよ」
啓さんは私の手ごと持ち上げ、甲にキスをした。
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