思いがけない贈りもの

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「はい」と理にギフト券が入ってそうな小さな包み紙を差し出された。 「何これ、開けていいの?」 「うん」 別に誕生日でも何でもない日。 不思議に首を傾げつつ、中身を開けるとペアの高級ホテルのディナー宿泊券が入っていた。 「……え、どうしたの、これ」 驚き瞳を何度も瞬かせる。 理は笑っているだけなので、理から母に視線を向けた。 「理君と私からのプレゼント。ほとんど理君のお小遣いとお年玉からだけど」 「ちょっと待って、どうして?」 「いつも僕のために動いてくれてありがとう」 「……えぇ……」 突然のご褒美。 理の優しい言葉に感激する。 「塾はゴールデンウィーク休みでしょ。宿泊券の期限は来年までだけど、もし行く人がいればどこかで行ってきたら?」 塾は夏休み冬休みと休みはあるものの纏まった休みはあまりない。 しかしゴールデンウィークは五日間休館日なのだ。 きっと、受験生の最後の長期休みとしているのだろう。 ちなみに“アルマ”は理が休みの期間、理に付き合ってあげたらと思い、定休日を入れて三日間は休みをもらっていた。 「行く人がいればって……」 啓さんが休日なのは知っている。 しかしとても急なことになるため、声をかけるのに悩む。 イタズラな母と視線がぶつかり、心が読まれそうでハッと逸らした。 「でも理は……一緒行かない?」 受験生を誘うのもどうかと思うが、申し訳なさが強く誘ってしまう。 「私達は少しだけ遠出をしようかって話してるのよ。それに理君からのプレゼントよ?」 「うん。勉強もしっかりするよ?」 「理……ありがとう」 思いがけない贈り物に私は感激したものの、同じくらい動揺していた。
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