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「舞、大丈夫?」
行為の後の啓さんはいつも優しい。
動いた後の彼の髪はやや乱れ、汗ばんでいるものの、私の瞳にはそれも愛しく映る。
「啓さんこそ、平気?」
「ん?」
「私、なんだかいっぱいお願いしたし……疲れてない?」
夢中だったが、私ばかりがいい思いをしている気がしてきた。
「うん。舞となら毎日でもこうしていれるよ」
彼は私をぎゅっと胸に閉じ込める。
ソファがみしっと音を立てた。
「本当?」
彼は「本当」と口づけし、頭を撫でた。
「嬉しい……。私も毎日啓さんと一緒にいられるなら、いたい」
彼の手は次に私の頬を撫でる。
「ありがとう……。僕はずっとどこかで舞にお付き合いを迫って、無理矢理こっちを向いてもらったような気がしていたんだ。
だから、嬉しい……」
「えぇ……」
初めて聞く、彼の心の内だった。
初めて水族館で告白された日のことがよみがえる。
たしかに、少し無理矢理だった。
「たしかに……。でも、あれは“仮”のお付き合いのことでしょう?本当にお付き合いを始めた時はもう好きだったよ」
彼がホッとしたように息をつき、「うん、ありがとう」と言った。
「ありがとうじゃなくて、好きって言って……」
彼の瞳が緩やかに下がる。
その瞳には愛しさが溢れて見えた。
「愛してるよ」
「啓さん……」
歯がぶつかるくらいの勢いで、私は彼の唇にキスをする。
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