最大の危機と最大の転機

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受験まであと、四ヶ月。 これまでの保護者会より空気はピリピリしていた。 私は前回同様一番後ろの席に座っていた。 ちなみに優羽ちゃん親子は前列と同じ場所。 やっぱり今日も優羽ちゃんの母親に、保護者会の始まる前に度々鋭く睨まれ、敵視されているのを強く感じた。 それはきっと、理の成績のことでだろう。 夏休み特訓の成果もあって、理の成績は伸び、算数も8割、9割が通常になった。 満点を出すこともしばしば。 それに比べ優羽ちゃんはなかなか成績が伸びない。 理からの話によると家庭教師をつけているらしい。だが、その成果が出ていないところだろう。 啓さんは家庭教師による学習は、塾と教え方が異なることも出てくるため、子供がこんがらがることもあり、善し悪しだと言っていた。 それははじめの頃の面談で聞いていたので、すんなり納得できたことだった。 しかし、自分の娘の成績が伸び悩むからと言って、敵視されるのは嫌だった。 今日は嫌なことがなければいいと何度思っただろう。 そのために、個人面談を保護者会のすぐ後に入れた。 啓さんには優羽ちゃんの母親が苦手だとは話せていない。 面談後、私は自習室へ行く理を見送り、二階から一階へおりようとしたのだが、優羽ちゃんの母親がわざわざ私の前へ来て、別の保護者と話を始めた。 “なぜここで?”と思ったがスルーが一番だと思い、教室を出ようとしたのだが、それができなくなってしまった。 「私の甥っ子が青付中なんだけど、似た家庭環境から集まったお友達ばかりだから楽しいって言うの」 優羽ちゃんの母親が私に一瞬視線を向けた。 嫌な視線だ。 「ほら、私立中に通う子って、ご両親が皆立派じゃない。経済的に余裕のある子ばかりだし、下品な子がいないのよね」 それは両親のいない理に対する遠回しの悪口。
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