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「今は公立でしょう。
片親やご両親のいない子、ご両親が健在でも裕福でないご家庭の子もたくさんいるじゃない。
だから優羽はお受験を考えたのだけど……」
いかにも自分の家は裕福だと言いたげ。
そして彼女は「あぁ」とわざとらしいため息を吐くと「優羽を早く私立に行かせて、同じ環境の子ども達の中でお勉強をさせたいわ」といやらしく笑った。
ーー悔しい。
理は姉が残した宝物のような存在。
私のことはなんと言われてもいい。
バカでも下品でも、何を言われても構わない。
しかし頑張っている理の悪口を言われるのは我慢できなかった。
だからたまらず、優羽ちゃんの母親を睨み、「ちょっと何……?失礼すぎ……」と反応してしまった。
優羽ちゃんの母親は瞳を大きく開け、驚いた表情を見せる。
まさか私が彼女に反撃するとは思わなかった、そんな顔だ。
ごめん、お姉ちゃん。
私、余裕のあるお受験ママでいられない……。
私は多分、怒りで優羽ちゃんの母親を罵倒しようとしていたに違いない。
啓さんが私と優羽ちゃんの母親の間に立ち、割らなければ……。
「面談を行いましょうか」
不思議とスッと、冷静になった。
「……あ」
啓さんが私を優しく見つめている。
怒りが羞恥に変わる。
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