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両親はお互いの顔を見合わせている。
“いいのかしら?”というところだろうか。
「甘えるのは申し訳ない」
父が言うと、母も「理、嘔吐を繰り返してると先生がおっしゃっていたわ……。きっとお車、汚しちゃうわ」と眉を寄せた。
たしかにそれは大変なことである。
少しも考えていなかった。
「車のことは大丈夫です。
お恥ずかしいですが、そこまで綺麗にしているわけではないので……。ご迷惑でなければ、ぜひ同行させてください」
また両親は顔を見合わせた。
「いいの?汚しちゃうかもよ?」
「大丈夫」
彼の顔は穏やかだ。
「お父さん、お母さん、啓さんはいいって言ってるよ?」
両親を上目遣いに見つめる。
「本当にいいのかしら……?でも、舞の運転は少し心配だわよね……」
「私は大丈夫です。お手伝いできれば嬉しいので……」
父の表情は頼りない。
「申し訳ない。お願いしてもいいですか?」
父の声は固い。
「はい。もちろんです」
人生なにがあるかわからない。
はじめは挨拶に来ただけだった。
まさか、啓さんの車に両親と乗ることになるなんて、少しも想像していないことだった。
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