最大の危機と最大の転機-2

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こんなに自分の家に入るのが怖いと思った日はないだろう。 テストで悪い点数をとった日だって、怒られてしかたなしに戻ってきた日だって、ここまで怖くなかった。 櫻木家の前で私と啓さんは顔を見合わせる。 「こういう場合はピンポンするの?」 「うんたぶん。僕はお客だからね」 “ただいま”と入っていきたいところである。 しかし、彼の印象はアップさせたい。 「お、押すよ」 インターフォンに手を伸ばす。 その手はふるふると震えていた。 「うん」 母は今か今かと待ち構えていたのかもしれない。 “ピンポン”と音が鳴るとすぐ、玄関の扉が開いた。 母だ。 母はフルメイクで、まるでこれからどこかへディナーに行くようなフォーマルな格好をしていた。 普段ならば突っ込みたいところである。 その母も啓さんを見て目を丸くした。 “まさか望月先生が!?”という顔である。 「いつもお世話になっております。望月です。今日は突然お時間を作っていただきまして、申し訳ございません。ありがとうございます」 深々と頭を下げる彼に固まっていた母も「わ、えぇ……。えぇ……そうなの……望月先生なんですか……」と困惑の声をあげた。 やはり怒られるに違いない。 覚悟をした。きっと、啓さんも。
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