最大の危機と最大の転機-2

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「彼は熱心ですごく生徒思いでいつも遅くまで残って仕事してて……」 彼のよさをアピールしようと思ったが、父に「舞、君もとりあえず座りなさい」と言われてしまう。 啓さんが「失礼いたします」と座ろうとする姿勢を見せるので、私も再び座った。 父の目が普段より鋭い気がしてならない。 私の恐怖がそう見せているのだろうか。 だが、彼は私より落ち着いているのかもしれない。 「お口に合えば嬉しいのですが……」と菓子折りを紙袋のままではなく中身を取り出し、両親側に包みの正面を向け、差し出した。 マナーは完璧といったところだ。 それに乗せて私も「あとこれね、お昼に食べたパンケーキ屋さんのパンケーキなの。啓さんが買ってくれたのよ!」と続けた。 私のマナーはさっぱりだろう。 母は啓さんに「ありがとうございます。気を遣っていただいて申し訳ありません」と言うと、「こちらはパンケーキなの?とてもいい香りがするわ」と鼻をスンとさせた。 少し空気が和やかになるのを感じ、「そう。ほら“石筒屋”の近くのパンケーキ屋さん。お母さん行ってみたいって言ってたじゃない?」と早口で言った。 「あぁ、あそこの?嬉しいわ。お持ち帰りもできるのね」 「そうなの。ねぇ、啓さん」 彼は小さく笑い「はい」と答えた。 「ありがとうございます、たくさん……。ありがたく頂戴いたしますね」 母にようやく笑顔が戻る。 父は固いままだけれど。 「お父さんはこっちが好きだと思うよ。和菓子の詰め合わせだから」 なんとか父を笑わせようと言うも「そうか」と言うだけ。 姉の時もこんな感じだったのだろうか。 義兄が結婚挨拶に来た日、私は家にいなかった。 今、どうして家にいなかったのだろうと少し後悔し、お仏壇をチラ見して“お姉ちゃん、見守っててね”と言った。
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