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“何を言うの……。そんなわけがないのに……”
「ち、ちがっ……!」
「違うわけないでしょう?」
悔しい。
けれど、怪しまれるに違いないのに、堂々とデートをしている私は悪い。
下唇を強く噛み締めた。
「甥っ子さん飛び抜けて優秀ですもんね。優羽なんて家庭教師もつけているのに……。望月先生もあなたもひどいわ。あり得ない……」
優羽ちゃんの母親が“はぁ”と大きくため息を吐いた。
「竹田さん、それは思い違いです。
彼の成績と私と彼女の関係は全く関係がありません。
彼が優秀なのは、彼自身の力です。私が個人的に授業をしたこともなければ、テスト問題を教えるなんて卑劣なことをするはずありません」
優羽ちゃんの母親の眉間がより険しくなり、皺が深く刻まれる。
「どうかしら、そんなの口ではなんとでも言えるわ。現に甥っ子さんだけ飛び抜けてるのがなにより怪しいもの……。
うちの主人は青付中出身なのよ。普通に考えればそちらより優羽の方ができがいいはずなのに、おかしいわよ」
優羽ちゃんの母親の最悪な妄想は止まらない。
激しく私の心は動揺している。
「受験は個人個人の問題です。ご両親とお子さまは別もので、成績は勉強したぶんだけ伸びていくものです。要領を掴む子、なかなか掴めない子と学習方法に差はありますが、テスト結果は個々の勉強の成果でしかありません」
声のトーンは抑えているが、彼の声は普段のものより強い。
優羽ちゃんの母親の前なので見つめられないけれど、怒っているような気がした。
「そもそも……彼は私と彼女の関係すら知りません」
優羽ちゃんの母親の視線が今度は私を見つめる。
反射で二度首を縦に振った。
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