最大の危機と最大の転機-2

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父は市職員だった。 定時であがることはそうなかったにしても、よほどのことがない限り、就業時間が深夜にさしかかることはなかった。 そして、土日祝日は休み。 啓さんとはまるで違う。 「舞は不器用で危なっかしいところもありますが、優しくて一生懸命な私たちの大切な娘です。 拝見したところ、君も舞のよさを理解してくれ、とても想ってくださっている」 不器用で危なっかしいとは初耳である。 感激していた心が少し冷静になった。 「親としては嬉しいことです。しかし……」 父が“うーん”と今度は腕を組む。 「啓さんの人柄には反対しないんだね?」 父が私をようやく見た。 「気になるのは不規則な塾講師っていう仕事の部分?」 「……まぁ、それが一番気になるところだな」 父が難しく顔をしかめた。 「啓さんもう何年もインフルにかかってないんだって。ねぇ、啓さん」 「あ、はい」 「生徒からもらいそうなのに、風邪ももらわないらしいよ。 お父さんなんて今年も去年もインフルかかったよね?」 父が「まぁ……」と気まずそうに答えた。 「たしかに塾講師は不規則な職業ですが、私は身体には本当に自信があります。 昔のことですが小、中、と皆勤賞を二度もらったことがありますし、社会人になってから一度も病気で休んだことはありません。 遺伝もあるのでしょうか。両祖父母もピンピンしております」 「わ、そうなの?知らなかった」 皆勤賞とは初耳である。 啓さんが控えめに笑うと「それはすごいわね」と母が乗ってきた。
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