彼の心の内

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お風呂あがりの啓さんは父の部屋着を着ているのにどこかオシャレで、同じことを思ったのか母が「望月先生脚が長いのね!」と感激していた。 まるで脚が短いと遠回しに言われた父が微妙な顔をしていたのがおかしかったのは、私だけの秘密だけれど。 「もうこんな時間なのね……」 母のあげた声に皆の目がテレビの上の壁掛け時計に視線が行く。 時計の針はもうすぐ19時をさそうとしている。 「すみません遅くまでお邪魔して……」 「そんな、こちらこそせっかくのおやすみだったのにごめんなさいね」 「いえ」 彼はとんでもないというように片手を横に振った。 「よかったら家で夕食を食べていかないかしら?」 「あ、いえ……。誘っていただきありがたいのですが、理君の調子が悪いですし、大変だと思いますので今日はお暇します」 話し合ってはいないが、今日のお泊まりは中止だろう。 彼には悪いけれど、理を優先したかったから、帰る様子の彼を止めなかった。 ただ小声で彼に「ごめんね」と伝えた。 隣にいた彼は私を微笑み見下ろす。
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