彼の心の内

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「なんだか申し訳ないわ……」 母は「いいのかしら?」と父を見つめた。 すると父が「……また日を改めて食事にでも来てもらえばいいんじゃないか」と腕を組み、わざとらしく私たちから視線を遠くした。 「え、いいの?」 それに反応したのは私だ。 父が気まずそうに「……あぁ」と言うから「よかったぁ、ありがとうお父さん」と彼の腕をギュッと掴む。 啓さんは戸惑った様子だったが、認めてくれたような気がして嬉しかったのだから仕方がない。 「……それでいいのかしら?でも、そうよね……今夜は理君も落ち着かないし、またにした方がいいわよね……。 それによく考えたら今からだとちゃんとしたものも用意できないし……」 母は独り言のつもりだろうか。 そうだとしたなら、漏れすぎだ。 そこに壁掛け時計が誰もが知る有名な童謡を歌い始める。 19時だ。 「こうしてる間にも引き留めちゃってるわね……」 母の呟きに啓さんは小さく首を横に振った。 それから私に顔を向け、小さく頷くと掴んだ私の腕離す。 その瞳は何か言いたげで、首を傾げたが、彼が「あの、舞さんのお父様、お母様」と突然かしこまったので、理由を思い出し、私も気を付けの姿勢をした。 「あ、はい」 それは、母まで移る。 「実は……」 啓さんがそう言った時だ。 突然座っていた父が立ち上がり「私も風呂に入ってこようかな」と言った。 「え!?」 驚きの声をあげたのは私だ。 「父さんも疲れたからな」 父は人の話を途中で遮るようなタイプではない。 それも私用を理由にするなんておかしい。 「ちょっとお父さん、話があるんだよ」 「それはまた次にでも聞こう」 父はリビングから出ていこうとする。
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