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「職場にはこれから舞さんとお付き合いさせていただいていることを話にいくつもりです」
その計画は知らなかったから、「そうなの?」と確認してしまう。
彼はコクりと頷いた。
「そうしたら望月先生は担任でなくなられるの?」
母の瞳は不安で揺れている。
大切な今、担任が変わることは悪影響だ。
私だってそれは不安なことだった。
ちなみに父は黙ったまま、ソファに腰を沈め、顎に手を当てた。
「いえ、それはありません。
残りの4ヶ月間、私が受け持たせていただきます」
「本当?」
母にまじり不安をぶつける。
「うん。昼間も話したけど、大丈夫」
「……うーん。でも塾にはなんて伝えるの?優羽ちゃんの母親にした説明でいくんだよね?」
啓さんが困り顔をした。
また私は先走り、余計なことを言ったのかもしれない。
「申し訳ありません。
実は私、昼間竹田さんにお会いした時に、竹田さんに舞さんと出会ったのは“進伸館”ではなくもっと前だと嘘を申しました」
啓さんの瞳が頼りなく細まる。
「啓さん私を庇ってくれたのよ。優羽ちゃんの母親が私が啓さんを目当てに来てたって言うから」
「竹田さんの様子を拝見してお付き合いの期間が長い方が心象がよいかと咄嗟に思ったのですが、もしかすると理さんとの関係をより怪しまれてしまったかもしれません。
理さんとも舞さんのご家族ともお会いしたことがないと申しましたが、怪訝そうな様子でしたので……」
「どっちにしたってあの人は色々言ってたよ。きっと正解。
塾にも長く交際してたって言ってた方がいいんじやないかな?」
啓さんが保護者に手を出すような人だと思われるのは嫌。
必死で訴えると、母が「舞の言う通りだわ」と割った?
「長くお付き合いしていたことになさい。それで優羽ちゃんのお母様に会ったことをきっかけに家に挨拶に来たことにすればいいわ」
「ねぇ、そうだよね」
母の側へ行き、母の腕を“パンパン”と軽く叩く。
「えぇ。そうよ、もういっそ結婚することになったって言ったらどう?」
母の発言に父が「……は?」とマヌケな声をあげた。
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