彼の心の内

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「ほら、愛の時がそうだったじゃない。大学に愛たちがお付き合いしていることがバレちゃった時、教授と学生との恋愛なんてご法度だったから、婚約期間だったってことにしたじゃない」 姉と義兄の結婚時、大学教授だった義兄の立場が悪くならないように、大学側に婚約期間だと嘘の報告をしたのは私も知っている。 大学に入学する前からの交際ならば仕方がないと認められたのは意外だった。 「それはそれだ」 「そうかしら?」 「そもそも結婚なんて、そんな勢いでするもんじゃない。舞はまだ子供だぞ」 「あら、立派な大人よ。もう26よ」 「30までは子供だ」 話が逸れてきている。 私たちは結婚話なんてしていなかったはずである。 「そもそも理がいるんだぞ。理が舞の結婚を望むわけないだろう」 父が大きな声で言った時だった。 「僕は舞ちゃんと望月先生が結婚するの賛成だよ」 リビングに、理の声が響き渡る。 たぶん、四人ともリビングの入り口をハッと見たはずだ。 「……理!」 いつからいた? 話は聞かれていた? そもそも体調は平気なの? 一気に尋ねたいことが頭に浮かび、理に駆け寄り抱き締めた。 「体調は?いいの?」 「うん。喉、乾いた……」 母が「あ、今白湯いれるわね」とキッチンへ駆けた。
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