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「でもね、一時それは止めて早く働いた方がいいのかなって思ってたんだ」
“えっ!”と焦った私は「そんなの、ダメ!」と叫ぶように言った。
「うん……」
理が少し驚いたように頷き、苦笑する。
「今はそんなこと思ってないよ」
「本当?」
本当だろうか。
たぶん、私の顔は怖いくらい、強い目で理を見つめている。
「うん。舞ちゃんと望月先生のおかげだよ」
“どういう意味?”と理を見つめ、啓さんを見つめた。
啓さんは瞳をゆっくりと瞬かせただけだった。
その瞳は気のせいか潤んでいる。
「舞ちゃんと望月先生が恋人同士だって知ったからだよ」
「え、なぜ?」
全く結び付かない。
首をひねった。
「僕を塾に送り迎えしてくれることが、舞ちゃんにとって大変なこととばかり思ってた時に、舞ちゃんと望月先生が恋人同士だって知ったんだ。
だから、僕が塾に通えば舞ちゃんは望月先生に会えるでしょう。
舞ちゃんにとって大変なことばかりじゃないかもって思えたから、気を取り戻せたんだよ」
啓さんと付き合うことを知られてしまえば、理に嫌われると思っていた。
いやらしい目を向けられるに違いないとばかり。
だから、その逆だなんてまさかだった。
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