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「おじいちゃん」
理は隣に座る父に顔を向けた。
父は“どうした?”と言うように瞳を少し大きくした。
言葉が出ないのは胸がいっぱいだからに違いない。
「僕、舞ちゃんと望月先生が結婚することを少しも嫌だなんて思ってないよ」
父が口元を手で隠し、ゆっくり瞳を瞬かせた。
「望月先生は先生の中でも熱心で、どんな時でも嫌な顔を見せずに丁寧に質問に答えてくれるいい先生だよ。
最近ではどんな問題も考えればわかるから質問することもないけれど、自習中は気にかけてくれて覗きに来てくれるんだ。
雑談も楽しいんだよ。僕、望月先生の授業は面白くて好きなんだ」
啓さんの勤務態度を一番知っているのは理だ。
間違いないだろう。
理の視線は今度は啓さんに移る。
「望月先生はテスト中、寝ないですしね?」
理が小さく笑いながら首を傾げた。
「寝る?」
母が不思議そうな声をあげた。
私も理に乗り出す。
「テスト中にたまに寝る先生がいるんだけど、望月先生は寝てるのを見たことない」
「えぇ、寝る先生いるの?」
「知らなかった……」
驚きである。
啓さんもそのようだ。
「もし、舞ちゃんと先生が結婚したら、僕は祝福するよ」
理が顔いっぱいに笑顔を乗せた。
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